2017年1月28日土曜日

白い貝がら

小学校4年生の夏休みあけ、
担任の先生が生徒ひとりひとりにおみやげをくれた。
白い貝がらひとつ。
その貝がらには、先生からそれぞれへの
短い詩のようなものが手書きされていて、
わたしの貝がらには、
「みおちゃんこいこい しろいすな あおいうみ」
と書かれていた。

それはわたしの宝物箱にしまわれ、
大人になってからも、ときどき手にしていたけれど
ある日、あたらしく生まれかわろう、
みたいな気持ちになって、捨ててしまった。

すべすべの手ざわりも、
ひらがなで書かれた読みやすい字も、
覚えていれば、
モノはなくても、だいじょうぶ、と思ったの。

いまでもあの貝がらを思い出す。
どうして捨ててしまったんだろう。
キュンと胸がいたくなって、ふいに涙がこみあげてくる。